adbird(広告鳥) 備忘録

LaTeX(LuaLaTeX 《 jlreq 》) で A5・縦書き・2段組の小説本・エッセイ本を作る

以前、ltjtbookクラスファイルで LaTeX(LuaLaTeX《ltjtbook》) で A5・縦書き・2段組の小説本・エッセイ本を作る を書いたけど、ここでは近年、話題のjlreqクラスで作成してみた。

B6版も作ってみた。→ LaTeX(LuaLaTeX 《 jlreq 》) で B6・縦書きの小説本・エッセイ本を作る


最終更新:
2022年10月7日。「A5tate-two-jlreq.sty」を修正(段落頭の「 の字下げ調整に bxjaprnind パッケージを使用)。
2022年6月19日。「A5tate-two-jlreq.sty」と「原稿.tex」を修正。chapterのページに柱が出ないようにした。
2022年6月9日。「原稿.tex」における画像、とくに「縦長1枚の画像」の書き方を修正。

追記:Cloud LaTeX テンプレートに収録されました!

Cloud LaTeX のテンプレートに、「小説本・エッセイ本テンプレート (A5・jlreq版・LuaLaTeX)」として収録していただきました!!

わざわざローカル(自分のPC)にLaTeXをインストールしたり、スタイルファイルを用意したりしなくても、Cloud LaTeX に登録さえすれば、ブラウザだけで「A5・縦書き・2段組の小説本・エッセイ本」を作れます。

でも、やはり万が一を考えて、ローカルにも環境を揃えておきたいという人は、下記手順をご参考に。

目次

環境

環境が変われば、うまくいかない場合もあるかもしれませんので、あしからず。

フォルダ内の構成

任意のフォルダ内が以下のような構成になるようにする。

任意のフォルダ
├── A5tate-two-jlreq.sty
├── breakfbox.sty
├── myuline--.sty
├── pic (画像ファイルを入れるフォルダ)
│    ├── cat001.jpg
│    ├── cat002.jpg
│    ├── cat003.jpg
│    └── cat004.jpg
├── uline--.sty
└── 原稿.tex

準備

  • Windowsの人はファイルの拡張子が表示されるようにしておいてください。

LaTeXTeX Live)のインストール

以下のリンク先を参照のこと。
インストールにはものすごく時間がかかる場合があるので、ご注意を。

uline--.sty breakfbox.sty myuline--.sty

下線・波線などのために必要なTeXスタイルファイル。
breakfbox パッケージから、以下の3つのファイルを入手する。

  • uline--.sty
  • myuline--.sty
  • breakfbox.sty

原稿.tex と同じフォルダ内に入れておけばよいが、その後もずっと使うのなら、LaTeX スタイルファイルの保存先 を参考に、TEXMFフォルダ内にインストールしてもいい。(TEXMFフォルダ内にインストールしたら、原稿.tex と同じフォルダ内に入れなくていい。)

A5tate-two-jlreq.sty

テキストエディタを開いて、以下をコピペして「A5tate-two-jlreq.sty」として保存。
細かい調整等は jlreq/README-ja.md at master · abenori/jlreq · GitHub を見ながら、いじってください。

%%% ページスタイル %%%
\NewPageStyle{hajime}{% 「はじめに」のページスタイル
%running_head_position=top-left,% 柱の位置
%running_head_font=\footnotesize,% 柱のフォントサイズ
nombre_position=bottom-left,% ノンブルの位置
%odd_running_head=,% 奇数ページの柱
%even_running_head=,% 偶数ページの柱
}

\NewPageStyle{honbun}{% 本文のページスタイル
running_head_position=top-left,% 柱の位置
running_head_font=\footnotesize,% 柱のフォントサイズ
nombre_position=bottom-left,% ノンブルの位置
odd_running_head=_chapter,% 奇数ページの柱
even_running_head=,% 偶数ページの柱
}

\NewPageStyle{chapter}{% 「chapter」のページスタイル
%running_head_position=top-left,% 柱の位置
%running_head_font=\footnotesize,% 柱のフォントサイズ
nombre_position=bottom-left,% ノンブルの位置
%odd_running_head=,% 奇数ページの柱
%even_running_head=,% 偶数ページの柱
}

\NewPageStyle{atogaki}{% 「あとがき」のページスタイル
%running_head_position=top-left,% 柱の位置
%running_head_font=\footnotesize,% 柱のフォントサイズ
nombre_position=bottom-left,% ノンブルの位置
%odd_running_head=,% 奇数ページの柱
%even_running_head=,% 偶数ページの柱
}
%%% ページスタイルここまで %%%

%%% 目次(\tableofcontents)設定 %%%
\makeatletter
%\renewcommand{\@pnumwidth}{3\jlreq@mol}% 点線とページ番号との間
\renewcommand{\@dotsep}{2}% 点線の間隔
\setlength\toclineskip{0.5\jlreq@gol plus .02\jlreq@gol}% 最初の数値が行間
\makeatother

%目次の部(part)の設定。
%\renewcommand*{\l@区分}{\@dottedtocline{レベル}{インデント量}{ラベル幅(数字+余白)}}
\makeatletter
\renewcommand*{\l@part}{\@dottedtocline{1}{3\zh}{5\zh}}
\makeatother

%目次の章(chapter)の設定。
%\renewcommand*{\l@区分}{\@dottedtocline{レベル}{インデント量}{ラベル幅(数字+余白)}}
\makeatletter
\renewcommand*{\l@chapter}{\@dottedtocline{1}{4\zh}{2\zh}}
\makeatother

%目次の節(section)の設定。
%\renewcommand*{\l@区分}{\@dottedtocline{レベル}{インデント量}{ラベル幅(数字+余白)}}
\makeatletter
\renewcommand*{\l@section}{\@dottedtocline{1}{6\zh}{2\zh}}
\makeatother
%%% 目次の設定ここまで %%%


%本文中の chapter(章) 設定
\ModifyHeading{chapter}{
pagebreak=begin_with_odd_page,% 奇数ページ起こし
font=\fontsize{14pt}{1.7\zw}\selectfont,%フォントサイズ14pt、行送り1.7文字分
label_format={\thechapter},% 漢数字のみ。第」や「章」を表示させない
}

%ルビや傍点  例 \ruby{山﨑}{やま|さき} 
\usepackage{pxrubrica}

%下線・波線・囲み文字 https://github.com/doraTeX/breakfbox から uline--.sty と breakfbox.sty を入手
%\usepackage[usetype1]{myuline--}
\usepackage{breakfbox}

%縦中横数字&minipageで<y>を使えるようにする
\usepackage{lltjext}

%画像
\usepackage{graphicx}

%写真のキャプションに「図」を入れない
\renewcommand{\figurename}{}
%画像まわり再定義
\makeatletter
\renewcommand{\thefigure}{%
%\ifnum\c@chapter>\z@\thechapter{}・\fi\rensuji{\@arabic\c@figure} %%画像のキャプションに余計な文字や数字を入れない
 }
\def\fps@figure{tbp}
\def\ftype@figure{1}
\def\ext@figure{lof}
\def\fnum@figure{\figurename\thefigure}
\makeatother

%キャプションのフォントサイズ等
\jlreqsetup{
caption_font=\normalsize,
caption_label_font=\normalsize,
}

%ダッシュをつなげる 参照:https://qiita.com/isari/items/1d0b60b76c7ef168e376
\usepackage{newunicodechar}
\makeatletter
\chardef\my@J@horizbar="2015% Unicodeの2015
\newunicodechar{―}{\x@my@dash}
\def\x@my@dash{\@ifnextchar―{%
  \my@J@horizbar\kern-.5\zw\my@J@horizbar\kern-.5\zw}{%
    \my@J@horizbar}}
% 次が―なら2回目のkernまでを、そうでないなら普通の―を出力
\makeatother

% 〜をつなげる。例)\〜\〜\〜〜! 最後だけ「〜」を2つにする。
\def\〜{〜\kern-0.25\zw}

%濁点 例)\dakuten{あ} 参照:https://tadeku.net/94393/
\usepackage{bxghost}
\newcommand{\dakuten}[1]{%
    \jghostguarded{%
        \leavevmode\hbox to 1\zw{%
            \rensuji{\hbox to 1\zw{#1\hspace*{-.25\zw}゛}}%
        }%
    }%
}

%段落頭の「 の字下げ調整に bxjaprnind パッケージを使用
\usepackage[force]{bxjaprnind}
\useparheadparenindent
\parheadparenindentamount{-0.5}

原稿.tex を書いていく。

テキストエディタを開いて、以下のような感じで書いていき、「原稿.tex」として保存。 文字コードUTF-8で。

\documentclass[
tate,
book,
paper=a5paper,
twocolumn,% 2段組
twoside,
fontsize=9pt, % 欧文フォントサイズ
jafontsize=9pt, % 和文フォントサイズ
head_space=17truemm, % 天の余白
gutter=20truemm, % ノドの余白
line_length=26zw, % 1行の文字数
number_of_lines=21, % 行数
column_gap=10truemm,% 段間
headfoot_verticalposition=5truemm,%本文とヘッダ/フッタの間の空き
]{jlreq}

\usepackage{A5tate-two-jlreq}% A5tate-two-jlreq.sty を適用

\begin{document}%
\pagestyle{honbun}% ページスタイル honbun 適用

%タイトルページ
\thispagestyle{empty}
\begin{minipage}{170truemm}
\null\vspace{50truemm}% 右余白
\begin{center}
{\LARGE 吾輩は猫である}\hspace{2\zw}{\large 夏目漱石}% タイトル、2文字分空ける、筆者名
\end{center}
\end{minipage}

\tableofcontents %目次を挿入
%以下に本文を書いていく。

\chapter*{はじめに}% 「*」をつけることで章番号を消す。
\addcontentsline{toc}{chapter}{はじめに}% 上記で章番号を消すと目次からも消えるので、目次には表示させる。
\thispagestyle{hajime}% ページスタイル hajime 適用

用紙A5サイズの縦書きの文章が書けます。

細かい調整をしたい場合は、A5tate-two-jlreq.styをいじってください。

\oline{傍線}、そして、\kenten{傍点}、\kenten[s]{傍点}……。

ダッシュ(―)を二つ。――。

〝ダブルミニュート(二重引用符)〟〝〟を「かっこ」と打てば出てくるように単語登録しておけばいいかも。

\breakfbox{枠で囲む。枠で囲む。枠で囲む。枠で囲む。枠で囲む。枠で囲む。枠で囲む。枠で囲む。枠で囲む。枠で囲む。枠で囲む。}

濁点だ\dakuten{あ}\dakuten{あ}\dakuten{あ}\dakuten{つ}\dakuten{い}。

波線をつなげる\〜\〜\〜\〜\〜〜!

目次の挿入には「\$ lualatex 原稿」を2回実行する必要があります。


\begin{figure}
\centering
\begin{minipage}<y>[htb]{105truemm} %
\hspace{-2truemm}% 余白調整
\centering
\includegraphics[width=105truemm]{./pic/cat001.jpg} %
\caption{多賀山公園のネコ} %
\end{minipage}
\end{figure}


\part{吾輩は犬ではない}
\pagestyle{honbun}% ページスタイル honbun に戻す

\chapter{吾輩は猫である}
\thispagestyle{chapter}% このページの柱を表示させない

吾輩は猫である。名前はまだ無い。

どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番\ruby{獰悪}{どう|あく}な種族であったそうだ。この書生というのは時々我々を捕えて煮て食うという話である。しかしその当時は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。ただ彼の掌に載せられてスーと持ち上げられた時何だかフワフワした感じがあったばかりである。掌の上で少し落ちついて書生の顔を見たのがいわゆる人間というものの見始であろう。この時妙なものだと思った感じが今でも残っている。第一毛をもって装飾されべきはずの顔がつるつるしてまるで\ruby{薬缶}{や|かん}だ。その後猫にもだいぶ逢ったがこんな片輪には一度も出会わした事がない。のみならず顔の真中があまりに突起している。そうしてその穴の中から時々ぷうぷうと煙を吹く。どうも咽せぽくて実に弱った。これが人間の飲む煙草というものである事はようやくこの頃知った。

この書生の掌の裏でしばらくはよい心持に坐っておったが、しばらくすると非常な速力で運転し始めた。書生が動くのか自分だけが動くのか分らないが無暗に眼が廻る。胸が悪くなる。到底助からないと思っていると、どさりと音がして眼から火が出た。それまでは記憶しているがあとは何の事やらいくら考え出そうとしても分らない。

ふと気が付いて見ると書生はいない。たくさんおった兄弟が一疋も見えぬ。肝心の母親さえ姿を隠してしまった。その上今までの所とは違って無暗に明るい。眼を明いていられぬくらいだ。はてな何でも容子がおかしいと、のそのそ這い出して見ると非常に痛い。吾輩は藁の上から急に笹原の中へ棄てられたのである。

\section{大きな池}

ようやくの思いで笹原を這い出すと向うに大きな池がある。吾輩は池の前に坐ってどうしたらよかろうと考えて見た。別にこれという分別も出ない。しばらくして泣いたら書生がまた迎に来てくれるかと考え付いた。ニャー、ニャーと試みにやって見たが誰も来ない。そのうち池の上をさらさらと風が渡って日が暮れかかる。腹が非常に減って来た。泣きたくても声が出ない。仕方がない、何でもよいから食物のある所まであるこうと決心をしてそろりそろりと池を左りに廻り始めた。どうも非常に苦しい。そこを我慢して無理やりに這って行くとようやくの事で何となく人間臭い所へ出た。ここへ這入ったら、どうにかなると思って竹垣の崩れた穴から、とある邸内にもぐり込んだ。縁は不思議なもので、もしこの竹垣が破れていなかったなら、吾輩はついに路傍に餓死したかも知れんのである。一樹の蔭とはよく云ったものだ。この垣根の穴は今日に至るまで吾輩が隣家の三毛を訪問する時の通路になっている。さて邸へは忍び込んだもののこれから先どうして善いか分らない。そのうちに暗くなる、腹は減る、寒さは寒し、雨が降って来るという始末でもう一刻の猶予が出来なくなった。仕方がないからとにかく明るくて暖かそうな方へ方へとあるいて行く。今から考えるとその時はすでに家の内に這入っておったのだ。ここで吾輩は彼の書生以外の人間を再び見るべき機会に遭遇したのである。第一に逢ったのがおさんである。これは前の書生より一層乱暴な方で吾輩を見るや否やいきなり頸筋をつかんで表へ抛り出した。いやこれは駄目だと思ったから眼をねぶって運を天に任せていた。

\begin{figure}
\centering
\begin{minipage}<y>[ht]{105truemm}
\hspace{-2truemm}% 余白調整
\includegraphics[width=105truemm]{./pic/cat002.jpg}
\caption{吾輩は猫である。名前はまだ無い。}
\end{minipage}
\end{figure}

しかしひもじいのと寒いのにはどうしても我慢が出来ん。吾輩は再びおさんの隙を見て台所へ這い上った。すると間もなくまた投げ出された。吾輩は投げ出されては這い上り、這い上っては投げ出され、何でも同じ事を四五遍繰り返したのを記憶している。その時におさんと云う者はつくづくいやになった。この間おさんの三馬を偸んでこの返報をしてやってから、やっと胸の痞が下りた。吾輩が最後につまみ出されようとしたときに、この家の主人が騒々しい何だといいながら出て来た。下女は吾輩をぶら下げて主人の方へ向けてこの宿なしの小猫がいくら出しても出しても御台所へ上って来て困りますという。主人は鼻の下の黒い毛を撚りながら吾輩の顔をしばらく眺めておったが、やがてそんなら内へ置いてやれといったまま奥へ這入ってしまった。主人はあまり口を聞かぬ人と見えた。下女は口惜しそうに吾輩を台所へ抛り出した。かくして吾輩はついにこの家を自分の住家と極める事にしたのである。

吾輩の主人は滅多に吾輩と顔を合せる事がない。職業は教師だそうだ。学校から帰ると終日書斎に這入ったぎりほとんど出て来る事がない。家のものは大変な勉強家だと思っている。当人も勉強家であるかのごとく見せている。しかし実際はうちのものがいうような勤勉家ではない。吾輩は時々忍び足に彼の書斎を覗いて見るが、彼はよく昼寝をしている事がある。時々読みかけてある本の上に涎をたらしている。彼は胃弱で皮膚の色が淡黄色を帯びて弾力のない不活溌な徴候をあらわしている。その癖に大飯を食う。大飯を食った後でタカジヤスターゼを飲む。飲んだ後で書物をひろげる。二三ページ読むと眠くなる。涎を本の上へ垂らす。これが彼の毎夜繰り返す日課である。吾輩は猫ながら時々考える事がある。教師というものは実に楽なものだ。人間と生れたら教師となるに限る。こんなに寝ていて勤まるものなら猫にでも出来ぬ事はないと。それでも主人に云わせると教師ほどつらいものはないそうで彼は友達が来る度に何とかかんとか不平を鳴らしている。

吾輩がこの家へ住み込んだ当時は、主人以外のものにははなはだ不人望であった。どこへ行っても跳ね付けられて相手にしてくれ手がなかった。いかに珍重されなかったかは、今日に至るまで名前さえつけてくれないのでも分る。吾輩は仕方がないから、出来得る限り吾輩を入れてくれた主人の傍にいる事をつとめた。朝主人が新聞を読むときは必ず彼の膝の上に乗る。彼が昼寝をするときは必ずその背中に乗る。これはあながち主人が好きという訳ではないが別に構い手がなかったからやむを得んのである。その後いろいろ経験の上、朝は飯櫃の上、夜は炬燵の上、天気のよい昼は椽側へ寝る事とした。しかし一番心持の好いのは夜に入ってここのうちの小供の寝床へもぐり込んでいっしょにねる事である。この小供というのは五つと三つで夜になると二人が一つ床へ入って一間へ寝る。吾輩はいつでも彼等の中間に己れを容るべき余地を見出してどうにか、こうにか割り込むのであるが、運悪く小供の一人が眼を醒ますが最後大変な事になる。小供は――ことに小さい方が質がわるい――猫が来た猫が来たといって夜中でも何でも大きな声で泣き出すのである。すると例の神経胃弱性の主人は必ず眼をさまして次の部屋から飛び出してくる。現にせんだってなどは物指で尻ぺたをひどく叩かれた。

\chapter{人間は我儘なものだ}
\thispagestyle{chapter}% このページの柱を表示させない

吾輩は人間と同居して彼等を観察すればするほど、彼等は我儘なものだと断言せざるを得ないようになった。ことに吾輩が時々同衾する小供のごときに至っては言語同断である。自分の勝手な時は人を逆さにしたり、頭へ袋をかぶせたり、抛り出したり、へっついの中へ押し込んだりする。しかも吾輩の方で少しでも手出しをしようものなら家内総がかりで追い廻して迫害を加える。この間もちょっと畳で爪を磨いだら細君が非常に怒ってそれから容易に座敷へ入れない。台所の板の間で他が顫えていても一向平気なものである。吾輩の尊敬する筋向の白君などは逢う度毎に人間ほど不人情なものはないと言っておらるる。白君は先日玉のような子猫を四疋産まれたのである。ところがそこの家の書生が三日目にそいつを裏の池へ持って行って四疋ながら棄てて来たそうだ。白君は涙を流してその一部始終を話した上、どうしても我等猫族が親子の愛を完くして美しい家族的生活をするには人間と戦ってこれを剿滅せねばならぬといわれた。一々もっともの議論と思う。また隣りの三毛君などは人間が所有権という事を解していないといって大に憤慨している。元来我々同族間では目刺の頭でも鰡の臍でも一番先に見付けたものがこれを食う権利があるものとなっている。もし相手がこの規約を守らなければ腕力に訴えて善いくらいのものだ。しかるに彼等人間は毫もこの観念がないと見えて我等が見付けた御馳走は必ず彼等のために掠奪せらるるのである。彼等はその強力を頼んで正当に吾人が食い得べきものを奪ってすましている。白君は軍人の家におり三毛君は代言の主人を持っている。吾輩は教師の家に住んでいるだけ、こんな事に関すると両君よりもむしろ楽天である。ただその日その日がどうにかこうにか送られればよい。いくら人間だって、そういつまでも栄える事もあるまい。まあ気を永く猫の時節を待つがよかろう。

% 縦長1枚の画像
\begin{figure*}
\centering
\begin{minipage}<y>[h]{105truemm}
\hspace{-3truemm}% 余白調整
\includegraphics[width=11truecm]{./pic/cat003.jpg}
\caption{黒猫}
\end{minipage}
\end{figure*}

我儘で思い出したからちょっと吾輩の家の主人がこの我儘で失敗した話をしよう。元来この主人は何といって人に勝れて出来る事もないが、何にでもよく手を出したがる。俳句をやってほととぎすへ投書をしたり、新体詩を明星へ出したり、間違いだらけの英文をかいたり、時によると弓に凝ったり、謡を習ったり、またあるときはヴァイオリンなどをブーブー鳴らしたりするが、気の毒な事には、どれもこれも物になっておらん。その癖やり出すと胃弱の癖にいやに熱心だ。後架の中で謡をうたって、近所で後架先生と渾名をつけられているにも関せず一向平気なもので、やはりこれは平の宗盛にて候を繰返している。みんながそら宗盛だと吹き出すくらいである。この主人がどういう考になったものか吾輩の住み込んでから一月ばかり後のある月の月給日に、大きな包みを提げてあわただしく帰って来た。何を買って来たのかと思うと水彩絵具と毛筆とワットマンという紙で今日から謡や俳句をやめて絵をかく決心と見えた。果して翌日から当分の間というものは毎日毎日書斎で昼寝もしないで絵ばかりかいている。しかしそのかき上げたものを見ると何をかいたものやら誰にも鑑定がつかない。当人もあまり甘くないと思ったものか、ある日その友人で美学とかをやっている人が来た時に下のような話をしているのを聞いた。




\chapter*{あとがき}
\addcontentsline{toc}{chapter}{あとがき}
\thispagestyle{atogaki}% ページスタイル atogaki 適用

あとがきとか、謝辞を書きましょう。

\rightline{広告鳥}

\begin{figure}
\centering
\begin{minipage}<y>[htp]{10.5truecm}
\centering
\includegraphics[width=10.5truecm]{./pic/cat004.jpg}
\caption{}
\end{minipage}
\end{figure}

%奥付け
\clearpage
\thispagestyle{empty}
\begin{minipage}<y>[htpb]{111mm}
\begin{center}
    \vspace{111mm} %奥付のページ上部からの位置

\begin{tabular}{l}
\multicolumn{1}{c}{\large{吾輩は猫である}}\\[3mm] %%タイトル
\hline
\\[-3mm]
\hspace{2mm}\normalsize{著\hspace{2mm}者}\hspace{5mm}夏目 漱石\\[0mm]  %%著者
\hspace{2mm}\small{発行日\hspace{5mm}\today}\\[0mm] %%発行日。「\today」のところに任意の日付を入れてもいい。
\hspace{2mm}\small{発行者}\hspace{5mm}{\small 広告鳥}\hspace{50mm}\scriptsize{※無断転載禁止}\\[-3mm]  %%発行者
\\\hline
\end{tabular}
\end{center}
\end{minipage}

\end{document}

実行

Ubuntuならフォルダ内で右クリック > 端末で開く で端末を開いて、下記を実行。
目次作成のためには2回実行する必要がある。

$ lualatex 原稿

完成

原稿.pdfができているはず。

サンプルPDFはこちら

LaTeX パッケージ(スタイルファイル)の保存先

追補:正式には .sty は「パッケージファイル」 .cls は「クラスファイル」 と言うらしい。

CTANに収録されているパッケージ(スタイルファイル)の場合

TeXLiveをフル以外でインストールしていた場合。元々TeXLiveをフルでインストールした場合は必要ないはず。

CTAN: Comprehensive TeX Archive Network に収録されていれば、

$ sudo tlmgr install パッケージ(スタイルファイル)名

等でインストール。(Windowsの場合、sudoはいらない。)

CTANに収録されているはずなのに、見つからない場合は、 Texエラー対処方法(tlmgrでパッケージをインストール) を参照のこと。

CTANに収録されていないパッケージ(スタイルファイル)の場合

CTANに収録されていないパッケージ(スタイルファイル)を使いたい場合は、以下の 1) または 2)のどちらかに保存。

1) texファイルと同じディレクトリ内

とくに何も考えず、コンパイルするtexファイルと同じディレクトリ内に配置すればいい。

2) TEXMFディレクトリ内にインストール

たびたびそのパッケージ(スタイルファイル)を使いたい場合は、

Linuxの場合、

/usr/local/texlive/texmf-local/tex

あたりに保存すればよい。

「配置場所は “厳密にここでなければならない” という規則はなく,LaTeX が見つけられさえすればよい」とのこと(LaTeX入門/各種パッケージの利用 - TeX Wiki)。

$TEXMFにパッケージ(スタイルファイル)を保存したら

sudo mktexlsr

を実行。(Windowsの場合、sudoはいらない。)

そもそも「TEXMF」ってどこ?

TeX Wikiなどで「$TEXMF (= {$TEXMFLOCAL,$TEXMFMAIN,$TEXMFDIST})」 と出てきたら、

Windows (Win64, Win32)なら

C:\texlive\texmf-local

C:\texlive\2022\texmf-dist

Linuxなどなら、

/usr/local/texlive/texmf-local

/usr/local/texlive/2022/texmf-dist

の位置を指す。

パッケージ(スタイルファイル)の使い方

パッケージ(スタイルファイル)を使う場合は、

texファイルのプリアンブルに以下のように書く。

\usepackage{パッケージ(スタイルファイル)名(拡張子「.sty」はつけない)}

参考リスト

TeX Live のアップデート

Windows

(管理者権限でコマンド・プロンプトを立ち上げて?)

tlmgr update --self --all

Linux

sudo tlmgr update --self --all

Windowsで64bit版をインストールしているのなら、

(管理者権限でコマンド・プロンプトを立ち上げて)

fmtutil-sys --all
luaotfload-tool --force --update -vvv

もやっておいたほうがいい。

TexLiveを64bit版にしてコンパイル速度を速くする

ツイッターで次のようなツイートを見つけた。

なので、【基本】WindowsでTeX Liveの64ビット版をセットアップする - LuaLaTeX Lab の通り、やってみた。

tl-win64.zip ダウンロード・展開・配置

ここ Index of /pub/CTAN/systems/windows/TLW64 にある tl-win64.zip をダウンロード後、展開。

その中にある win64 というフォルダを、 C:\texlive\2022\bin (※「2022」のところはインストールされているtexliveのバージョンによって変わります)に入れる。すでに win32 というフォルダがあるはずなので、win64 というフォルダが並ぶという形になるはず。

パスを通す

次に Windowsでプログラムやスクリプトにパスを通す を参考に、「C:\texlive\2022\win64」にPathを通し、「C:\texlive\2022\win32」より上に来るようにする(win64を優先的に実行するため)。

念のため、Windowsを再起動。

その他

コマンドプロンプトで、以下の2つを実行。

1)TLW64を使う方法で設定を再構成する らしい…(よく分かってない…)。

fmtutil-sys --all

2)全上書きなのでforceオプション必須。これで64ビットに対応するフォント設定ができる らしい…(同上)

luaotfload-tool --force --update -vvv

TeX Live/Windows - TeX Wikiによると、64bit版をインストールすると、64-bit Ghostscript も必要になると書いてあるけど、00README.TLW64によると、dvisvgm や gsftopk というツールで64-bit Ghostscriptを読み込むらしい。pLaTeXやupLaTeXで必要になるのかもしれないが、今のところ、64-bit Ghostscriptをインストールしなくても、LuaLaTeXでは使えている。

学会等のTeXテンプレートでpLaTeXやupLaTeXを使わざるをえない場合は、00README.TLW64 に書いてあるとおりに 64-bit Ghostscript を入れる必要があるかもしれない。

たしかにコンパイルする速度が速くなった気がする(たんなる気持ちの問題かもしれないけど)。

Rhythmboxのボリューム表示

いつの頃からか、Ubuntuのミュージック再生アプリのRhythmboxのボリューム調整が表示されなくなっていた。

不便なので、表示させる方法。

設定 > プラグインAlternative Toolbar の上で右クリック > 設定 で、

音量コントロールにチェックを入れる

右上の「再起動」でOK。

Geany に自作テンプレートを追加

Geanyでは、ファイル形式(tex,htmlなど)によってテンプレートファイルが用意されているけれど、自分で設定したものを追加する方法。

例えば、texファイルのテンプレートファイルの場合。

下記ファイルを「mytemplate.tex」として適当なところに保存。

\documentclass[a4paper,10.5ptj]{ltjsarticle} %フォントサイズ10.5pt、論文形式
%%% 2段組のときは上記の[ ]の中に、「twocolumn」を追加
%%% LuaTEX-ja パッケージ使用時には長さの単位として「zw」「zh」は使えない。「\zw」「\zh」とすること。

%%%MS明朝・MSゴシックの場合
%\usepackage[ms]{luatexja-preset}

%%%ページ余白
%\usepackage[top=35truemm,bottom=30truemm,left=30truemm,right=30truemm]{geometry} 

\title{論文タイトル}
\author{著者} 
\date{} 

\begin{document}
\maketitle% タイトル・著者名の出力。(段組みなしのとき)
\begin{abstract}% 論文要旨(アブストラクト)
概要を書く。
\end{abstract}
%\maketitle% タイトル・著者名の出力。twocolumn(2段組のとき)

\section{見出し}

文章を書く。

\end{document}

それをWindowsであれば、C:\Program Files\Geany\data\templates\files の中に移動させる。

Linuxでは、

  • system: /usr/share/geany/templates/files/
  • user: ~/.config/geany/templates/files/

にテンプレートが入っているらしいが、システム全体の方に入れるのはオススメされていないらしい。Geanyをアップグレードすると上書きされて消えるっぽい。

入れるなら、ユーザーフォルダの方に。

Geanyを起動していたら、一度、終了させて、再度立ち上げる。

ファイル > テンプレートから新規作成 > file.tex で、上記の「mytemplate.tex」が選択できる。

Windowsのファイル名の連番を変える

Windowsの標準機能で複数ファイルを選択した状態でリネームした場合、「(1)」のような半角カッコつき連番のファイル名に変わるのだが、それを「_1」のように変える方法。

以下の内容で、「連番数字調整.bat」として保存する。

echo off
for %%f in ( * ) do call :sub "%%f"
exit /b

:sub
set fname=%1
set fname=%fname: (=_%
set fname=%fname:)=%
ren %1 %fname%
goto :EOF

エクスプローラーのアドレス欄に「shell:sendto」として、開いた場所に上記の「連番数字調整.bat」をコピー。

  • リネームしたいファイルを複数選択
  • 右クリック→送る→「連番数字調整.bat」

で連番数字が変更される。